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襖の持つ文化的持続可能性について

12世紀前半に制作されたとされる源氏物語絵巻は11世紀前半に書かれた源氏物語を絵画化したものであります。その絵巻物の「東屋」には引き違いの襖が描かれていることから襖は千年の間生活の中で住空間を仕切る用具として発達してきました。当時は大工道具も未発達で骨太であったため大変無骨で重たいものであったものと思われます。

他方飛鳥時代に仏教とともに日本に伝えられた紙漉きの技術は日本で独自の発達をし、平安時代には平安貴族や寺院などの需要家に支えられ薄様の紙を作るまでに発達しました。やがて武士の台頭とともに鎌倉時代から室町にかけて政治の権力が朝廷から武士へと移る過程の中で、書院造りとともに「床の間」が登場し掛け軸などの制作に使われる表具の技術も発達していきました。そして同時にこの和紙と澱粉のりを使う表具の技術が襖の独特の下張りの施工方法が確立されていったと思われます。

襖の制作は骨と呼ばれる障子のように木で組んだ心材の上に和紙で幾重にも下張りをします。襖にとってこの下張りの工法はとても重要な意味があります。和紙を前面に糊をつけて「貼る」のではなく幾重にも浮かして「張り」重ねることにより何重もの空気の層を作ります。和紙は靱皮繊維が水素結合した構造をしています。これは親水性があるということです。こうすることにより襖は湿度の高い時には湿気を吸い込み乾燥時には湿気を放出するということを繰り返しています。そして襖全体がふっくらとして仕上がり外からの不快に感じる音さえもやわらかくする効果があるのです。ちなみにこうした機能は伝統的な日本家屋では襖だけではなく畳、柱、壁などすべてが備えていました。

さらに現代では人類にとって深刻な問題となっている環境問題の観点から襖をみてみましょう。 襖に使用される一般的な心材や縁は製材からでる端材を使用しています。また、和紙は栽培可能な低木類(高さ3m以下)の楮(くわ科)、三椏(ジンチョウゲ科)などの皮を原料としています。これらの原料の生産性は極めて効率的で廃棄物の発生も抑制的であります(リデュース)。

そのうえ襖の下張り工程の「うけ張り」が浮かして張られているため、張り替えの時には「うけ張り」の紙と襖の紙が簡単に剥がすことができるような仕組みになっています。このことはかなり長期間にわたり心材を取り換えることなく何度でも張り替えることが可能になっています。縁についても心材との接合は隠し釘によるものなので脱着も容易にできます(リユース)。

日本の古紙回収率は2013年では80.4%でリサイクル率は99%です。襖の張り替え時には全国で大量の襖紙が廃棄されますがリサイクルして押入れに使われる雲華紙や一般的な下張り用の紙である茶ちり、ちり受けなどに再生産されています(リサイクル)。ちなみに日本では「宿紙−しゅくがみ」といって昔は紙が貴重であったため平安時代より用済みとなった紙を原料に戻し漉き返すなどリサイクルをしていました。

このように襖というものは科学という言葉さえなかったはるかな時代より時を経てなお今日住宅空間をしきる用具として使われています。このことは単にその時代ごとの経済活動の結果ということではなく日本人のDNAが持っている自然に対する洞察力、自然観、神や仏への宗教観などを濃縮したエキスのようなものであるとも考えられます。

今、人類は科学技術の目覚ましい進歩を享受しながら片方ではオゾン層の破壊、地球温暖化、熱帯林の破壊や生物多様性の喪失などの環境問題やエネルギー問題を抱えています。そして未来に向けて現代の文明をどのようにして持続して発展させることができるかを模索しているなかでユネスコは「持続可能な開発のための文化」というものにその活路を見出そうとしていますが、襖振興会は襖や和室もその文化の一つであると考えます。

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